7月の植物と豆知識

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桜のジャージは何桜?

 

ヤマザクラとソメイヨシノ

ラグビーの日本代表のユニホームは、「桜のジャージ」です。

このサクラは、私たちが見慣れたサクラとは少し違うところがあります。

お花見の満開のサクラを見ると、葉が出る前に花が咲いています。そして、花が咲

き終わってから、葉が出てくるのです。ところが、桜のジャージを見ると、花が咲

いている枝に、葉っぱが出ています。同じようなサクラは花札でも見ることができま

す。花札の桜は、咲き乱れているサクラの花のあちこちに、葉が描かれているのです。

葉が出てから花が咲くのは、古くから日本に自生するヤマザクラの特徴です。これ

に対して、私たちがふだんお花見で目にするサクラはソメイヨシノです。ソメイヨシ

ノは江戸時代中期の1750年頃に江戸で作られたサクラの品種です。

ソメイヨシノは、葉より先に花が咲き乱れます。そして、空を覆い尽くさんばかり

に一面に花が咲くのです。こうして、ソメイヨシノは人気になり、全国に植えられて

いきました。しかし、サクラの木は成長するのに時間が掛かりそうなのに、どうして

短期間でこれほどまでに増やすことができたのでしょうか。じつは、ソメイヨシノは

枝を取ってきて接ぎ木や挿し木で増やします。こうすれば、種子で増やすよりも、

ずっと早く苗木を育てることができるのです。しかも、種子で増やすと親のサクラとは

別の特徴を持つ子孫ができてしまいます。

しかし、枝を取ってきて作られた苗木は、親のサクラの分身ですので、親とまったく

同じ特徴になります。

 

サクラが一斉に咲く理由

このように元の個体を分身させて増やしたものは、「クローン」と呼ばれます。人間

のクローンというのは、SF映画の中だけのお話ですが、植物は簡単にクローンを作

ることができるのです。

植物の増え方には。種子で増える種子繁殖と、枝や茎などの分身で増える栄養繁殖と

いう方法があります。栽培植物の場合は、栄養繁殖をすれば、元の個体と同じ性質の

ものを増やすことができるので好都合です。そのため、サツマイモやジャガイモ、

イチゴ、キクなど栄養繁殖のできる作物は、できるだけ栄養繫殖で増やしています。

もともと自制するヤマザクラは、木によって花の咲く時期がまちまちなので、長い

間、花を楽しむことができます。とこらが、ソメイヨシノは、すべての木が元の木

から増やしたクローンなので、同じ時期に咲きます。そして一斉にさいて。一斉に

散っていくのです。

天気予報では、春の訪れを感じさせる桜前線を紹介します。気温に従って、南から

順番にサクラの花が咲いていくのも、全国のサクラの木が同じ性質を持つクローン

だからこそ可能なのです。

 

 

―「面白くて眠れなくなる植物学」より抜粋―